滋賀県大津市で保育園児の列に車が突っ込み園児2人の尊い命が奪われた。ほかに保育士を含む14人の負傷者が出るという痛ましい事故が起きた。
その日の夕方、死傷した園児が通うレイモンド淡海保育園の記者会見が開かれた。理事長、副理事長、園長などにより事故についての説明と記者による質疑応答が行われた。この様子は全国に生中継された。記者会見では記者の質問に反応した園長が終始号泣する姿が映し出されていた。ネット上では記者会見の必要性や記者の質問内容を巡り批判の声が巻き起こった。
【大津園児死亡事故 マスコミ叩きとネットの民度 保育園記者会見 産経新聞清水記者と上級国民飯塚幸三氏で見る炎上】

休園していたレイモンド淡海保育園は5月13日に再開、園児らが5日ぶりに登園した。
しかし問題は終わらない。
記者会見をめぐって、保育園側、マスコミ側に感じた違和感と、再発防止に向けて必要なことを考えてみた。
記者会見の違和感 タイミングは適切?
この記者会見についてはいくつかの疑問や違和感がある。
まず、記者会見を開くタイミングについてだ。
レイモンド淡海保育園では保護者への説明会が予定されていたが、それよりも先にまず報道機関への記者会見だった。
保育園側は、今回の事故が社会的に影響の大きい事故であっことから「まずは報道機関への説明」という考え方があったのかも知れない。
しかし、事故に関する詳細な検証が充分でない段階で何を説明しようとしたのだろうか。
「散歩のコースについては事前に何コースか用意し安全性については確認している。保育士の人員配置についても基準を満たしており園児の安全確保については万全の体制で臨んでいた。従って保育園には落ち度がない」ということを釈明したかったのだろうと感じた。
記者会見が残したもの
次に、保育園側の記者会見に臨む姿勢についてだ。
【若松ひろみ園長 号泣記者会見はマスコミ対策?大津園児2人死亡事故】

「散歩に関する安全性確保に落ち度がなかった」ということは運営側としては必要な説明責任だったとは思う。
しかし、記者会見の実際は園長の号泣に終始した印象だった。
結局、記者会見から得られたものは「園長への同情論」しかなかった。
園長の立場からすれば大切な園児を失った悲しみや遺族に対する痛恨の責任の想いなどでとても尋常な精神状態ではなかったことは充分に推測できる。
しかし、園長の日頃の様子や人柄からこのような場面でどのような反応をするか記者会見を主催した運営側に想像できなかったのかが疑問だ。
冷静に話のできる副理事長らが今回の事態に関する保育園側の体制について説明と謝罪をすれば良かったのではないかと思う。
ネット上では記者の質問の内容に対して批判が集中していたが、問題の本質から論点がずれてしまったように感じる。「事故は防ぐ方法はあるのか」「自治体や国の対応を望む」というような建設的な議論であってほしいと思う。
マスコミ側の報道姿勢
次に、報道側の問題はなかったのか。
保育園側が記者会見を開いた背景には報道側の要請があったと推測できる。
果たして混乱状態の保育園に対し即日の記者会見の要請が妥当だったのだろうか。
【保育園の記者会見大炎上 大津園児2人死亡事故 マスコミに批判殺到】

また、それを生中継する必然性があったのか。
生中継ではなく編集してからの放映という方法もあったと思う。
結果的に園長の号泣会見になってしまったことで報道の趣旨が不鮮明になった。
報道機関として伝えるべきは憔悴している園長の表情ではなく、事故の背景であり原因究明のはずだ。また、現場の記者の質問内容についても「社」として吟味・精査する必要があったのではないか。
今回の件に限らず記者会見場でよく見られる光景に「各社が同じような質問を繰り返す」というものがある。
「質問」なのか「質問という名目の攻撃」なのか疑われる場面を多々目にすることがある。
【産経新聞清水記者を特定!本名と顔画像は?大津事故保育園会見で炎上】

視聴者の知りたいことは事実関係の究明でありそれが報道機関の使命だと思う。ワイドショー的には面白いのかもしれないが、それでは問題解決に繋がらない。
保育園側に望むこと
今回の事故における保育園の対応には落ち度はなかった。少なくとも刑事責任を問われるような事態には発展しないだろう。
【下山真子 新立文子 顔画像は?大津の事故、園児2人死亡の犯人!園児の列に車突っ込む】

13人の園児に対して3人の保育士が付き添い、コースの選定についても事前に準備した計画に基づくものだった。
また、「園外への散歩」という保育活動についても園児の発達段階などを踏まえた上での適正な保育活動であると思う。
しかし、痛ましい事故は起きてしまった。世間の多くの人々が知りたいことは、「事故を防ぐことはできなかったのか」ということだ。もちろん、運転者の安全に対する認識の甘さが招いた結果であることは言うまでもない。しかし、たまたま偶然の悲運がもたらした結果だと結論づけて片付けてよいのだろうか。
全国の保育園に子供を通わせる親からは「散歩を中止してほしい」という要望が出されるケースもあるという。この事故を受けて全国の保育園や自治体では「保育園の散歩経路の安全性の再確認」や「安全対策」について研修会を開いたり通達を出したりなどが行われている。
再発防止は保育園だけの問題ではない
大津の事故は防ぎようのない事故だったのかも知れない。
しかし子どもの安全と健全な成長を守るには「これで充分」ということはないと思う。
今回の事故を冷静に客観的に分析し今後に生かすことが、当事者であるレイモンド淡海保育園の責務であると思う。
それは保育園だけで解決できる問題ではなく地域や自治体が連携して取り組むべき問題であると思う。
例えば、事故現場である交差点の歩道にはガードレールがなかった。もし、ガードレールがあったなら結果はもう少し別の形になったのかも知れない。散歩は園児にとって大切な活動には違いないが、日常的に行われることでリスクは増す可能性は否定できない。また、園庭のない保育所は全国にたくさんある。成長期の子供にとって必要な野外での活動をどう保障するのか。
そのような事を充分に検証し全国に向けて提案し発信することが、号泣会見より遥かに価値のあることであり、使命であると思う。そして奪われた小さい命に対する何よりの供養だ。
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